たぺログ

Emily likes tennisという日本のバンドのドラマーが描く人間賛歌的なブログ

幻のコールドチキンサンドイッチ

朝は早く起きてバンド練習へ向かった。不意に行きのバスの中で寝ぼけながらなんとなくスマホの家計簿アプリを見ると、「あれ?こんなに俺の貯金って減ってたの?」と気づく。

ノリで少し背伸びした家賃の家に引っ越し、ノリで買っていたアメリカの株価がジリジリ下がっていた上に、さらに円高とかいうやつで俺の貯金は明らかに目減りしていた。偉い人が「株なんて買って放置して気づいたときには上がっているものだからこまめに見るな」みたいな格言を残しているが実際には放置したら大変なことになっていた。人の言うことは信じないに限る。

貯金というのは意識すると急に不安になってくる。別に新卒の時なんて貯金0に近い状態だったのに、やはり「30代になったけどお金が貯まっていない自分」を意識すると俺のこれまで積み上げてきたものってなんだっけとなってしまう。お金を自分の価値基準にすると「年収の高い他人は俺より偉い」という明らかな負け戦が始まってしまうので「お金より大事なもの」というふわふわしたもので普段は自分を気持ち武装理論武装ではなくふわっとしたもの)していつもふわふわコーデで俺の中だけバトルに勝利しているのに、数字を見るとやはり狼狽えてしまうのだから金というのは恐ろしい。

練習ではボーカルがなかなか「恐竜がムカつくおっさんに頭突きをする曲」の歌詞が思いつかないと言っており(これくらいのネタバレはいいんじゃないでしょうか、どうですか)、まあ普通思いつかんわなと同情する。聖○新聞とか青汁CMみたいな感じですごいハートフルなドラマの最後にいきなりガ○ジャの宣伝とかしたら面白いですよね、などとちっとも面白くないアイディアを出したりしながらつつがなく練習は終わる。

帰り際にこないだ行った家族旅行のお土産を持ってき忘れたことに気づく。俺は普段お土産を買わないのでお土産を持ってくるという習慣がまだ身についていないのだ。

 

今日はサウナ友達との約束があり練習後は新宿のホームサウナに行く。しかしサウナの温度が85℃でぬるかったため、これまで何度か検討してきたが遂に「再訪なし」の烙印を押すこととなる。NO ととのい NO FUTURE です。サウナ友達は「あまりにぬるすぎて岩盤浴にいる感覚になったので全裸でいるのが恥ずかしかった」と分かりづらい不満を述べていた。

 

その後鳥貴族へ移動しキャベツと貴族焼きをもりもり食いながらメガハイボールを飲んでいると友達がある報告をしてくる。

これはプライバシーに関わることのためここは匿名性を考慮し、はっきり書くことにするが、子供ができたということであった。(彼は既婚者である。念の為)

「おめでとう!」と絶叫した俺はまあ正直俺の人生にはほとんど関わりのないことではあるが、なぜかほっとしたのでこういう時は普通の人間は何かするらしいなと思い、鳥貴族代を奢ってやることにした。株で貯金が減った話を散々したあとだったので心配されたが、「いつか破産したらお前の子供に返してもらう」と言っておいた。

ドトールでコーヒーを飲んで一日中血管を痛めつけた俺達は帰路につく。

 

家に帰って2時間くらい寝まくったあと俺は起きて自分がなぜかつらいことに気づいた。

今日は比較的というかここ数週間ではわりと充実した楽しい一日だったはずだ。まあ貯金が気づいたら減っていた的なことはあったが、これは出来事とかそういうものによってもたらされるものではなくいわゆる「漠然とした不安」みたいなものだなと思った。こいつは下手に忙しい時や困っている時などではなく、中途半端な幸せ、「ぬるま湯」の中にいる時にこそ湧いてくる感情だということはなんとなく気づいていた。こいつのことはよく知っているが対処法については酒を飲んでひっくり返るか、寝るしかないとわかっていた。酒はすでに飲んでいるのでまた使うのはあまりよろしくない。

俺はベッドの上で精神的にのたうち回ったあと、また二度寝しようとしたが寝れなかった。そのため本でも読もうかと思ったがこれもまた集中できなかった。映画の気分でもない。

俺はグーグルマップでカフェを調べてみた。もう22時前だったが夜中まで開いているカフェが徒歩圏内にあった。しかも最近できたという。夜に思い立ってカフェに本を読みに行くなんて、なんだかオシャレ味を帯びてきた。俺はボッサボサの髪のままカフェへ行った。

なんか趣があり環境音楽が流れているバーみたいなところで一瞬物怖じしたが店主がいい人そうだったので入った。

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古本屋で買ってまだ読んでいなかった本を持っていった。おかしなタイトルのこの本は短編集なのだが、実は「ライ麦畑でつかまえて」のキャラクターが出てくる話がたくさん載っていることを読んで初めて知った。まさに俺の今の不安に寄り添ってくれるような本だ。「ライ麦〜」の内容はあんまり覚えていないが、ひねくれた情けないやつがひねくれたことをずっと言っている本だった。作者の映画もこの前観たが、作者もひねくれていた。つまり「ライ麦〜」は半自伝小説らしい。持ち込みをした時に「この主人公は精神病なのか?」と言われて作者が落ち込む描写があって面白かった。

あとコーヒーがこれまでに飲んだことないくらい旨くて感動した。豆を買って帰った。

 

短編の中でコールドチキンサンドという単語が出てきて、俺は急にファミマのパリジャンチキンサンドが食べたくなった。しかしパリジャンチキンサンドはある時期からファミマで見かけなくなってしまっている。俺は帰り道に100円ローソンに寄った。すると奇跡的にフランスパンがあった。半額のレタスもあった。そして奇跡的に俺は最近ダイエットをしているので家に作り置きした鶏むね肉のチャーシューがあるのだ。こないだ買ったマスタードとカロリーオフのマヨネーズもある。

奇跡とは起きるものではなく、起こすものなのだ。

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めちゃくちゃうめえ。

 

そしてさっき見返して気づいたのだがコールドチキン「サンド」なんてどこにも書いてなくてただのコールドチキンという食べ物だった。俺は腹が減っていて幻覚を見たらしい。

不安は消えた。俺は正気に戻った!

おやすみ。