たぺログ

Emily likes tennisという日本のバンドのドラマーが描く人間賛歌的なブログ

Go To ここじゃない何処かまたはいつか居た場所

はしがき

私は、その鳥貴族に、同じ日に2回行ったことがある。

 

第一の手記

恥の多い食事を行ってきました。

 

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ある土曜の夜、大学時代の友人、ニンニクジャンキーのジャン吉(仮名)から突然のLINEがあった。だがそれは必然でもあった。

 

「GO TO EATやろうぜ。実質0円なんだ」

 

何でも彼が言うには、日本政府がコロナ対策として人数✖️1000円分のポイントを外食する度に配っているらしい。

つまり、一度の来店で1000円以内に飲食代を抑えれば実質黒字になるという、日本総乞食化計画みたいな制度が始まったのだ。

もちろん断る理由も予定も俺にはない。

いつだって俺たちは無意味なウェーブに乗ってきたもんな。

 

俺たちがググりながら立てた計画はこうだ。

15時 串カツ田中 集合

16時 鳥貴族(1回目)

17時 近くのタイ料理屋

18時 鳥貴族(2回目)

自由解散

 

1ミリの隙も無い。

 

ルール:一つの店では1000円/人 内になるべく会計を抑えること。執着は敵。

 

今回は2人組なので一つの店に行くごとに予約した人に2000ポイントずつ入るので、それぞれが2店ずつ予約することで俺たちは公平に4000円分ずつのポイントをゲットできる。

だから、ルールを守れば今日の飲み代は実質的には返ってくる。無料なのだ。

失敗は許されない。

 

 

だが初手、串カツ田中でジャン吉は勝負に出る。

チンチロリンハイボールを頼んだのである。

俺は驚き「おい、本当にいくのか?わかってんのかよ」と思わず声を荒げた。確かに確率の悪くない賭けではあるが、奇数が出れば倍額の800円分のメガハイボールが出てきてしまうリスクがある。そうするとジャン吉はこの1店目でほとんどつまみの選択肢がなくなる。死刑宣告だ。

「ああ」

彼はそのリスクを完全に理解したうえで、しかしそれでも全く怯むことなくサイコロを振った。それは勝負師の目だった。一時期毎日仕事帰りにチンチロリンを頼んでいた社畜の彼の血には一生消えない「チンチロリン」の文字が刻まれているのだろう。

 

偶数が出た。

彼は賭けに勝った。

ハイボールは半額の200円になったのだ。

 

俺は彼の勇気を讃え、彼は誇らしげにニンニク串を頼んだ。

俺は普通に400円くらいのビールと400円くらいするチー平焼きと牛カツという何の面白味もない900円でフィニッシュした。

 

2店目は鳥貴族だ。普通に1000円ぽっちでは田中で1時間も潰せなかった為、少し早めに移動を開始した。するとまだ店が開いていない時間に着いてしまった。

店の前にはガンツのルール説明みたいなフォントで怪文書が書いてあった。

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「だからてめえらは貴族焼きを食べてくだちい」みたいな感じだろうか。うぬぼれ、というよりはうわごとみたいだなと思う。

ポイントのために日曜日の昼から鳥貴族のファーストロット開店前から待つなんて、まあ実質的には人として死んだようなものかもしれないなとしみじみ思った。俺もまた実質0円だ。

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鳥貴族ではももとミックスジュースと味玉とかを頼んだ。今後の戦いに備えてアルコールを一旦抜くという腰抜けっぷりである。

だが戦場では臆病なやつが生き残るという。勲章をつけている奴は全員敵前逃亡した卑怯者だと誰が言っていたっけか。

俺もこんなところではまだ死にたくないのだ。

ジャン吉はいつの間にかメガ金麦という邪悪な飲み物を頼んでしんどそうにしている。

貴族ってなんだっけな?

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次の店は少し離れていたので歩いた。ちょうど良い腹ごなしだ。

道すがらジャン吉が「YouTubeネオニートに説教する動画を見た」と言った。

ある予備校講師によると、世の中の年収800万円以下の人たちは800万円以上の人たちのお荷物なんだという。

なぜなら前者の人たちは福祉やら社会からもらう金額が自分たちが払っている税金よりも高い人たちなんだ、と。

だが俺は、「だから稼がないことを申し訳なく思え」と言われるのは何だか納得できなかった。そして生ビール一杯で酔っ払っていた。だから「そんなに税金払うの嫌なら俺が税金たくさん納めるから年収五千万くれや」と言った。きっと金持ちはこんな風にGoToで鳥貴族を回ったりしないだろう。

 

3店目はタイ料理屋だった。結構良い店だったから一生ガラガラにしたいのでここでは店名を明かさない。気になるなら直接聞いてくれ。

牛肉のガパオとグリーンカレーと怪しい東南アジアのエナジードリンクを飲んだ。

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どっちもライス?おいもうめっちゃシメに入ってるじゃねえか。ドラゴンお前まだここまでで一杯しか飲んでないだろ。

俺は大器晩成型なんだよ。

 

4店目はさっき行った鳥貴族にもう一回行った。

新宿には鳥貴族がコンビニ並みに大量にあるのに何でわざわざ同じ店舗に行くのかというと当日ネット予約できる店が意外とあんまり無かったのだ。

2時間前にも来た同じ店のほぼ隣の席に座っていると何だか不思議な感覚に陥る。

俺は終わらない鳥貴族の夢を見ているのだろうか?鳥貴族空間で時間を逆行しているのだろうか?

ここにある酒はいつ頼んだ酒だろうか?過去、それとも未来に頼んだ酒?

ジャン吉は釜飯とメガ金麦を頼んでいる。また米?こいつの胃袋、未来と過去から胃袋を挟撃作戦してないか?もう放っておこう。

釜飯は30分待ったが、しかし美味かった。明日からの晩ご飯毎日これにしようかな、と思ったが家の近所の鳥貴族は予約がいっぱいのようだった。

もうGOTOが流行り出しているのかもしれない。総乞食化、冗談じゃなくなってきたな。

まあでも、最近近所にすごく美味しい焼き鳥を見つけたのでGOTOはたまにで良いかな。なんか対象がチェーン店ばっかりだからひもじい気持ちになるんだよな。

確かにお金はかからなかったけど、1人だったらやらなかったな、と思うくらいには虚しく、楽しい試みであった。

 

勝ったのか、負けたのか、わからないままの俺たちはタリーズでコーヒーを飲んで帰ることにした。

ジャン吉は仕事で怒るのはしんどい、と虚な眼をして言った。

ジャン吉の最近の仕事は外注先などに怒ることなのだそうだ。どんな風に怒るのか?と聞いて再現してもらったらアウトレイジみたいな詰め方をしていたので仕事は人を変えてしまうんだなあと思った。

俺はむかつく事はあるけど態度に出して怒ったことはこの5年くらい無かった。多分責任のある仕事、プレッシャーのある仕事を任されていなかったからだろう。俺はそういう仕事は下手くそだろうなと思う。喜怒哀楽どの感情でも表すと泣きそうになってしまう。

「でもネット見て怒るのは楽しいんだよな」と彼は言う。

「怒りは貧民の最後の娯楽らしいよ、ネットに書いてあった。」

 

それは他人事だからではないだろうか。自分に関わるかもしれないことと、実際に関わっていることは違う。実際に今、自分に関わることで怒るのは疲れる。怒るのにはコストがかかっている。

だからTwitterでキレ続ける誰かに「なんで怒らないの?怒ればいいのに!怒らなきゃ!」って言われても俺は「なんで怒らされなきゃいけないの?」って言いたい。もちろん、怒りたい人は怒ったらいい。得られる利益もあるのかもね。でも今の僕は悲しむので忙しいから。

 

結局GoTo、GoToと言いながら俺たちは何処にも行けない。いつになったらここじゃない何処かへ行けるんだろうな。そんな場所は初めからないのかもしれない。俺たちは飽き性だから、何処へ辿り着いてももっと良い何処かーーー鳥貴族の別店舗を探し続ける。でも、もっと良い貴族焼きってなんだ?

この前、図書館で「食べて、祈って、恋をして」という能天気そうな小説を借りてパワフルな感じになってやろうと思って読んだら現実的でめちゃ暗い話がちょいちょい挟まれていて予想外だった。その中で主人公がイタリア人にI've been thereという言葉を説明するシーンがあった。英語では他人の苦悩を慰める時、「私もそこへ行ったことがある」と表現するらしい。苦悩は時間という地図の中の特別な場所だ。そこにはかつて誰かが居て、今はいない。その事実がまたそこにやってきた誰かの励ましになると。

永遠に繰り返し鳥貴族の席に座り続ける俺は、この場所を離れ、いつか羽ばたいていけるのだろうか?そして誰かがそこに座るのだろうか?

 

でも俺はほんとうは何処にも行かず、家に猫、猫が欲しい。海よりでかい猫

猫はでかければでかい方が良く、

また小さければ小さいほどこれからでかくなる幸せを持つ。

もしもう大きくならないなら、俺がでかい愛で包んであげれば良い。

猫はそんなものはいらないと、さっと避けることだろう。

 

 

 

 

RESULT:

 一軒目 2050円

 二軒目 1635円

 三軒目 1800円

 四軒目 2289円

 タリーズ 671円

計8445円/2 = 4223円

 

 

コーヒー代を除けばギリギリ黒字のようだ。俺たちは戦いに勝った。だがまだまだ戦いは終わらない。このキャンペーンは年末まで続くのだから。忘年会は恐ろしいことになるだろう。だって幹事が数万とかのポイントもらえちゃうんだから。多分、近いうちに規制かかると思う。

 

そしてタリーズのソファ、スタバより座り心地いいかもしれんな、と思った。それに気付けたのが一番の成果だったかもしれない。

 

 

※ここまで昨日書いてて「平日の方が読んでもらえんだよな」と思って置いてたら今日、鳥貴族が困っていると言う記事が出てました。

 

news.yahoo.co.jp

まあ個人的には困るなら制限すればいいと思うし俺も似たようなもんだけど、せっかくなら2品くらいは頼んだほうが心が惨めにならないですよ。曲がりなりにも貴族なんだし。